ドキュメンタリー映画の現在  松江哲明監督『フラッシュバック メモリーズ 3D』

 少し前ですが京都に松江哲明監督『フラッシュバック メモリーズ 3D』
を見に行きました。僕は高校生の頃、原一男監督『ゆきゆきて、神軍』を
見て衝撃を受けました。それは子供の頃見たハリウッド映画のバイオレンス映画
とは違いノン・フィクウション ドキュメンタリー映画ということで、映画の中で
起こることが作り物でなく事実だという衝撃でもあり、また主人公の奥崎謙三は架空
のキャラクターを役者が演じているのではなく、奥崎謙三という魂をもった人間が
現実の世界に存在しているという実存的な感動だったと思う。
 ドキュメンタリー映画は監督自身がカメラを回すことが多く原一男監督の映像も
かっこよくて『さようならCP 』(1972年)『極私的エロス 恋歌1974』も今見ても古く
感じずすばらしいです。原監督はもともと東京綜合写真専門学校中退し1969年には
銀座ニコンサロンで写真展「馬鹿にすんな!」を行う。この時点までは写真家志望
だったが、写真展を見にきた小林佐智子(シナリオライター志望だった)と知り合い、
後に共同して映画を撮ることになる、だそうです。日本映画学校で実際に原監督の
授業を受けた時の印象は、思っていたより意外とやさしそうな人だなと思った。
 松江哲明監督は映画学校の先輩で学校に平野勝之と来て話していたのが2000年
くらいだった。在日韓国人の出自をテーマにセルフ・ドキュメンタリーを卒業制作で
つくりデビューし、活躍されている。天才肌の平野勝之とは違い、どくとくの客観性
とバランス・相対感覚を持った監督だと思う。在日のテーマをからませる作品の方が
面白く近年のミュージシャンを主人公にした映画はあまりしっくりこず、何か
空中分解したかのような印象を受ける。